オカヤドカリの飼育

生き物の世話は「餌を与えて環境を整える」という点で基本的に同じ。
餌は市販されているものもあるので、それほど難しくはないが、問題は環境作りと環境の維持。
いまはネットで多くの情報が集まるので、飼育道具に大差はないはずだが、似たような道具を使っていても、世話の仕方で雲泥の差が出てしまう。

飼育の達人は環境作りが上手く、しかもそれを維持している。
料理上手が目分量で味付けできるのと同じで、達人は多くの経験に基づく「いい塩梅」が身に付いているので、上辺だけ真似ても上手くいかないことが多かったりする。

飼育している環境そのものが異なり、しかも「生き物」が相手なので、様々な情報を参考にしつつ、結局は眼前のオカヤドカリの様子を観察しながら、ベストな環境の模索が必要。

オカヤドカリなどの甲殻類は薬品に弱いので、必ずカルキ抜きをした真水を与える。

カルキ抜き

水道水には消毒のため微量の次亜塩素酸カルシウム(カルキ)が含まれており、カルキによって水道水は雑菌が繁殖しないようになっている。
冷蔵庫の自動製氷機に水道水を使用するよう注意書きがあるのも同じ理由。

水道水に含まれる次亜塩素酸カルシウムは人体への影響がないものの、細菌を抹殺する程度の殺傷力はあり、小さなオカヤドカリにとっても非常に危険な物質になるので、カルキ抜きは必須。

カルキ抜きにはハイポなどの中和剤、煮沸、汲み置き、光分解など様々な方法がある。

浄水器や中和剤などが確実なようだが、紫外線による光分解に興味が湧いたので、水道水を入れてフタをしたペットボトルを3日ほど太陽光に晒してみた。

実験の結果、水道水を入れたペットボトルにフタをして太陽光に晒すのは有効。

試験紙の右が普通の水道水で、分かりにくいが遊離残留塩素は0.4mg/L~0.7mg/L程度になっている。
その左が光分解されたペットボトルの水で、右から2番目は浄水器から出てきた胡散臭い水素水、一番右が水素水ではない浄水器の水。

個人的に浄水器は「騙されている感」があって微妙だったのだが、実験結果をみたところ浄水器の水と、光分解したペットボトルの水はPH値に違いがあるものの、残留塩素とMアルカリ度はほぼ同じだと判明してしまった。

海水

海水を用意するのは面倒なのだが、真水と比べるとオカヤドカリは明らかに海水を好んで摂取しているので、海辺に生息しているオカヤドカリの生態も踏まえ、海水はあったほうが好ましい。

人工海水は水道水に適量を混ぜるだけでカルキ抜きと同時に海水が作れるというものだが、1Lあたり36gと記載の分量通りに作ってみたら塩分が濃すぎたので、塩分濃度と比重を測定できるハイドロメーターは必須。

オカヤドカリは器用にハサミを使って餌を食べるので、餌の大きさなどは気にせずとも、気に入ったものであれば普通に食べる。
植物メインとはいえ、野菜であれば何でも食べると言うわけでもないので、好物のアダンなどを無農薬栽培しておくと良いかも。

市販されているオカヤドカリ用のポップコーンやゼリーなどの餌は、商品に記載がある通り「おやつ」や「栄養補助」なので、主食として与え続けるのは微妙。
また、脱皮のために動物性の餌も必要で、乾燥シュリンプや煮干しなどを用意しておくと便利。

オカヤドカリは少食なので、大半は食べ残してしまうが、水槽内の環境悪化を避けるため、エサと水は基本的に毎日交換する。

野生のオカヤドカリであれば、魚の死骸などを食べているので、腐肉でも良いと思うが、臭いだけでなくハエなども集るため飼育下ではいろいろと問題がある。
また、オカヤドカリは気に入ったエサを独り占めしようと、餌入れから持ち出すこともあるので、食べ残しの処理には要注意。

エサの詳細については下記の「オカヤドカリの餌」を参照

オカヤドカリの餌
意外と好き嫌いが多いオカヤドカリ。 与える餌に困ってしまうので、いろいろ与えて食べっぷりでランキングしてみた。

床砂の洗浄

最も厄介なのが床砂の洗浄。
オカヤドカリはよく糞をするので、1週間も放置しておくと、床砂や流木などの上は5mmほどの黒い糞が目立つようになる。
少食の割には立派な糞を出すので、活発なバクテリアがいたとしても分解できる量ではなく、定期的な入れ替えが必要。
2週間に1度の頻度で砂を洗うよう記載されている記事が多いものの、1度に全量を交換するのは大変で、そもそも複数のオカヤドカリがいる環境では脱皮している個体がいたりするため、床砂を全替えするタイミングは意外と限られている。

脱皮中の個体がいる場合は、汚染がひどい表面から5cm程度の砂のみ2週間~3週間くらいの頻度で交換しており、床砂の全替えしているのは2~3ヶ月に1回程度。

汚れた床砂は土入れスコップなどですくい上げ、バケツに入れて水洗いする。
バケツの半分以下くらいを目安に砂を入れ、水を足してかき混ぜて汚れを浮かし、汚れた水を捨てる。
この作業を繰り返し、汚れが目立たなくなれば終了。
かき混ぜた際の濁りは、サンゴ砂の粒子なので、透明にならなくても問題ない。

洗ったサンゴ砂は洗濯ネットなどに入れて天日干し。
洗ったものをそのまま水槽に戻すのではなく、紫外線による殺菌を行うため、できれば日差しの当たる場所で乾燥させる。
ちなみに室内の場合、窓ガラスで紫外線が遮断されており、殺菌効果は期待できないので、天日干しは屋外で行う。
また、屋外であれば日影でも紫外線は届くが、直射日光に比べて紫外線量は半分程度に落ちるので、乾燥後もしばらく干すなどして調整すると良いかも。

乾燥したサンゴ砂は次回の床砂交換時に使用するので、ジップロックなどに入れて保管。

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サンゴ砂を水槽に入れる際は、びちゃびちゃでもなく、半乾きでもない感じに砂を湿らせる。

画像には霧吹きが写っているが、実際には3~4kgの砂に対して500ml程度の水を入れ、全体に馴染ませてから、次の砂を入れて湿らせるという作業を繰り返している。

60cmの水槽で床砂を15cmの厚みにするために使用したサンゴ砂は17kg、使用した水の量は4~5L。

水分の補給

湿らせた床砂の厚みが15cmほどあれば、地域差もあると思うが5月~10月くらいまでなら、水槽内の湿度は一時的に下がることはあっても、平均して60%~70%程度に維持できるので、霧吹きなどによる水分補給を頻繁に行う必要はない。

ただし気温が下がり、ヒーターで水槽内を温め始めると、床砂の表面が乾燥するようになるので、定期的に霧吹きなどでの水分補給が必要。
また、水槽の底部にヒーターを置くと、床砂の温度が暖められ、水分が蒸発して水槽なの湿度が80%前後に保たれるのでオススメ。

水分が多すぎると藻のようなカビのようなものが発生する。

初夏から秋口までは2週間に一度くらいの頻度で、床砂を3分の1から半分ほど交換していれば、床砂が乾燥することはほぼない。

温度と湿度の調整

オカヤドカリは呼吸するために水分が必要で、気温も20℃以上を保つようにする。
通気性の良い水槽のフタに使用して風通しの良いところに設置した場合、室外の湿度が60%以上あっても水槽内の湿度は50%以下になってしまうため注意が必要で、温湿度計の設置は必須。

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メッシュタイプの蓋を使用すると、オカヤドカリの行動範囲が広がるので良いのだが、乾燥しやすいためメッシュの上にパンチングされた塩ビ製の板を載せ、更に乾燥がひどい場合は塩ビ板の上にがラス板を載せて湿度の調整を行っている。

ただ、水槽内の温度が20℃以上で、湿らせた床砂を15cmほど敷いた状態であれば、水槽の風通しを注意するだけで、水槽内の湿度は60%以上を維持できるので、問題は晩秋から春先までの温度調整ということになる。

冬場の対策

大阪では10月下旬頃から最高気温が20℃を下回り、12月下旬から2月頃まで最高気温が10℃を切ってくるので、段階的に寒さ対策を行っている。

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冬仕様で使用するのは断熱シートとシート式のヒーター。

水槽の背面に遠赤外線で温度調整が自動で行われる「ピタリ適温」を両面テープを使用して貼り、その上から断熱シートで水槽3辺の全面を囲み、正面のみ床砂が隠れるようにシートを貼る。

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ときどき断熱シートを逆に使っているのを見かけるが、断熱シートはスポンジ部分を水槽側にしないと保温効果がない。

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オカヤドカリたちは脱皮時に最深部まで潜るが「ピタリ適温」は接地面が熱いと感じるくらい温度が上がるので、砂が高温になることを防ぐため、水槽の下に断熱シートを敷き、水槽は厚さ1cmのゴム板で浮かせて、水槽と断熱シートの間にヒーターを設置している。

断熱シートだけでは気温はほとんど上昇しないので、最高気温が20℃を下回った時点で背面のヒーターを使用すると2~3度の気温が上昇。
最高気温が10℃を下回ると底面ヒーターを使用することで、室内の気温が20℃くらいなら水槽内は26℃、湿度85%を維持できる。

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深夜から早朝の気温が低くなってくる11月下旬くらいから、夜間はサバイバルシートで水槽全体を覆っている。
大したことがないように思うが、サバイバルシートで覆うことで室温が低くなっても、水槽内の温度はほとんど影響を受けなくなる。

さすがに真冬は一時的に20℃を下回ることもあるが、水槽内が15℃以下にならないよう注意していれば特に問題はなかったりする。

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