分類と種類
オカヤドカリは熱帯域に分布するヤドカリの仲間で、甲殻類(甲殻亜門)の エビ目(十脚目)・異尾下目・オカヤドカリ科・オカヤドカリ属 に分類され、国内では小笠原諸島と南西諸島に生息しています。
🐚 オカヤドカリ科にはヤシガニが属しています。
日本には7種類のオカヤドカリが確認されており、C.cavipes という種が一般的にオカヤドカリと呼ばれていますが、販売されているのは ムラサキオカヤドカリ ( C. purpureus ) と ナキオカヤドカリ ( C. rugosus ) が多く、ムラサキオカヤドカリもナキオカヤドカリも販売時には区別されていません。

ムラサキオカヤドカリは幼体のうちは白色ですが、成長するにしたがって水色から紫色に変化し、個体によっては美しいグラデーションになります。

ナキオカヤドカリには、眼柄(頭部と複眼を結ぶ部位)の下部に黒斑があります。体色は褐色系が多いですが、幼体の頃はムラサキオカヤドカリと似ています。また、成長に合わせて体色も変化し、一概に褐色が濃くなるというわけでもありません。
🐚 ナキオカヤドカリの「ナキ」は「鳴く」に由来します。黒斑が泣きぼくろに見えるからではありません。
国の天然記念物
国産のオカヤドカリは国の天然記念物に指定されています。ただし、特別天然記念物や種の保存法の対象種ではないため、文化庁の許可を得た業者による捕獲・販売は認められています。
国の許可を得ていない一般人が沖縄や小笠原諸島などの海岸でオカヤドカリを見つけて持ち帰ると文化財保護法違反(5年以下の拘禁刑 又は30万円以下の罰金)になります。
🐚 近年、外国人旅行者が大量のオカヤドカリを無許可で捕獲し、国外に持ち出そうとして摘発される事案が相次いでいます。また、国内の販売店に対しても、オカヤドカリの国外への流通を国内に限定するよう行政指導が行われています。
身体的な特徴
オカヤドカリを含め、エビやカニなど十脚目に属する甲殻類の脚は、5対10本あります。オカヤドカリは 後ろ2対の脚で貝殻を背負っている ので、普通に見えている部分はハサミを入れて3対6本です。
また、オカヤドカリのハサミは左右が非対称で、左のハサミが大きく右が小さくなっています。
🐚 左右のハサミが非対称の甲殻類に「シオマネキ」のオスがいます。ただし、シオマネキは求愛行動のために片方のハサミが大きくなっており、左右どちらが大きいかは個体によって異なります。一方、オカヤドカリは個体に関係なく左のハサミが大きく、貝殻に引っ込んだ際に入り口を塞ぐ役割をしています。

オカヤドカリは、大小のハサミを器用に使い分けます。特に、食事の際は大きなハサミでしっかり押さえ、小さなハサミでちぎり取りながら口に運んでいます。
外殻と腹部
エビやカニなど多くの甲殻類は全身が硬い外骨格で覆われていますが、ヤドカリの腹部は外骨格が退化して柔らかくなっています。これは貝殻の中に腹部を収めることで防御を「外注」する方向に進化した結果と考えられています。
自分で外骨格を作るには多くのエネルギーが必要ですが、空になった巻き貝を借りることでそのコストを省けるメリットがあります。一方で、貝殻への依存にはリスクも伴います。成長に合わせて適切なサイズの貝殻に宿替えしなければならず、体長に合わない貝殻では腹部を十分に守れなくなります。
🐚 同じオカヤドカリ科のヤシガニは、幼体のうちは貝殻を背負いますが、成長とともに腹部にも硬い外骨格が再形成され、貝殻を必要としない体に進化しています。
呼吸
オカヤドカリは水棲のヤドカリが陸棲に進化したと考えられています。そのため、頭胸部のエラで呼吸しつつ、腹部でも皮膚呼吸を行っています。ただし水棲の名残から、エラ呼吸も皮膚呼吸も湿った状態でなければ空気中の酸素を取り込めません。
この特性があるため、飼育ケース内の湿度管理は重要で、乾燥した状態が続くと呼吸困難に陥り、最悪の場合は窒息死する可能性があります。
オカヤドカリは、宿貝の中に乾燥しないよう少量の水を貯めています。この水はオカヤドカリにとって命綱のようなもので、乾燥した環境に晒された場合に、エラや皮膚を湿らせるために使用されます。
陸生ヤドカリの呼吸生理を調べた研究では、宿貝内に蓄えられた水分が必要に応じてエラのある空間に送り込まれ、エラを湿らせる役割を果たしていることが示されています。
🐚 オカヤドカリは水中に長時間潜れますが、オカヤドカリのエラ呼吸は魚のように水中の酸素を取り出せないので、水中での呼吸はできません。
脱皮
オカヤドカリは脱皮を繰り返して成長します。脱皮の際は、古い外殻に含まれるカルシウムを体内に吸収した後、外殻を脱ぎ捨て、新しい外殻が固まるまでの間は通常床砂の中に潜って行います。
脱皮の期間はおおむねオカヤドカリの大きさに比例して長くなる傾向があり、2週間から長ければ2ヶ月以上かかることもあります。
脱皮には大きなリスクが伴い、栄養不足などが原因で脱皮不全が起こると死に直結します。
👉️ 脱皮についての詳細は下記ページを参照して下さい。

オカヤドカリの生態
オカヤドカリは熱帯域の海岸近くに生息する生き物で、陸上で生活しながらも繁殖のために海を必要とする独特の生態を持っています。
宿貝と宿替え
オカヤドカリは硬い外殻で覆われていますが、腹部には外殻がなく柔らかいため、巻き貝などの貝殻(宿貝)を背負って腹部を保護しているほか、乾燥を防ぐ役割も果たしています。
「ヤドカリ」の名のとおり、成長に合わせて大きな貝殻へ引っ越しを繰り返すため、飼育ケース内には背負っている宿貝と同等以上の大きさの貝殻を入れておきます。また、宿貝は持ち主によって内部が削られるなど住みやすく改造されるため、他のオカヤドカリが背負っていた宿貝が好まれる傾向があります。
オカヤドカリの成長速度は宿貝の大きさによって変化する傾向があり、オーバーサイズの貝を背負うと脱皮回数が増えて短期間で大きくなりますが、小さめの貝を背負っている場合は成長が遅くなります。
🐚 オカヤドカリの成長速度は宿貝の大きさによって変化すると思われ、オーバーサイズの貝を背負うと脱皮回数が増えて短期間で大きくなりますが、小さめの貝を背負っている場合は成長が遅くなる傾向があります。
実際、水棲のヤドカリでは大きな貝殻を与えた個体のほうが成長速度が速いことが研究で確認されています。
シェルファイティング
適当な大きさの貝殻がない場合、他のオカヤドカリを貝から追い出すため、シェルファイティング と呼ばれる攻撃行動を起こすことがあります。
攻撃側は脚で相手の貝をホールドしながら何度もひっくり返し、自分の宿貝を相手の貝に当てて音で攻撃します。相手を傷つけるような直接攻撃はありません。

攻撃を貝の中で耐えれば攻撃側が諦めて解放しますが、耐えきれない場合は丸裸で追い出されます。丸裸のオカヤドカリは乾燥の危険に晒されるため、長時間そのままの場合は替えの貝を入れるなどの対応が必要です。
🐚シェルファイティングを予防するには、飼育ケース内に様々なサイズの貝殻を常備しておくことが重要です。
寄生生物の忌避による宿替え
オカヤドカリの体表をダニのような小型の生物が這っているのを確認した際に、宿替えを繰り返す行動が見られることがあります。宿貝を脱ぎ捨てることで、付着している生物から逃れようとしているものと考えられます。
対処としては、全身が沈む深さの容器に残留塩素を除去した真水または海水を入れ、オカヤドカリを数分間浸けておく方法があります。付着している生物は数分程度では窒息しませんが、水中を嫌って宿主から離れる可能性があります。
🐚 浸水後は宿貝の内部にも水が入るため、オカヤドカリが落ち着いて呼吸できる場所に戻し、自然に水を排出させます。
活動時間
野生下のオカヤドカリは、日中の高温下での乾燥や外敵から身を守るため、活動のピークが夜間にある夜行性です。ただし「夜行性」といっても日中まったく活動しないというわけではなく、野生下でも湿度が十分に保たれた日陰や、曇天・雨天時には日中の活動が観察されます。
飼育下では温湿度が安定しており、捕食圧もないため、日中に活発に動く姿も普通に見られます。
🐚 同じく夜行性とされるカタツムリは、明所では殻に引きこもる傾向が強く、日中の活動はあまり見られません。これは体表からの水分喪失への耐性が低いためです。一方オカヤドカリは宿貝に水を蓄えて鰓を湿らせる仕組みを持つため、湿度が保たれていれば明所でも活動的に振る舞えます。
寿命
オカヤドカリには20〜30年という長寿の個体も確認されていますが、飼育下での寿命は10年程度と言われています。
飼育下での死因は温湿度の管理不足や衛生管理不足のほか、脱皮の失敗、共食いなどが挙げられます。
🐚 長寿の甲殻類にロブスターがいます。ロブスターは脱皮の際に消化器官の内壁も一緒に脱皮するため、まるで若返るかのように、脱皮で生まれ変わるというイメージがありますが、消化器官の内壁の脱皮はオカヤドカリを含む十脚目全般に見られる特性で、寿命に大きく影響しているとは考えられていません。
ロブスターが長寿なのは、細胞の老化に関わるテロメア(細胞分裂のたびに短くなる染色体末端の構造)を修復する酵素(テロメラーゼ)の働きが活発で、老化が抑制されているためだと考えられています。
繁殖
オカヤドカリの繁殖期は5〜8月頃で、交尾後にメスは数百〜数千個の卵を産み、腹部の腹肢にぶら下げて約1ヶ月間抱卵します。
卵が孵化に近づくと、メスは大潮前後の夕方に波打ち際へ下りて海水に浸かり、孵化したばかりのゾエアを海中に放出(放幼)します。
ゾエアはプランクトンとして海中で成長し、5回の脱皮を経てグラウコトエと呼ばれる幼生に変態します。グラウコトエは岸近くに戻ると貝殻を背負って上陸し、稚ヤドカリとなります。成長して陸に上がった後は、繁殖のためにメスが海に戻る以外は海に戻ることはありません。
飼育下での繁殖には、ゾエアを放出できる海水環境と、グラウコトエが上陸して貝殻を背負うまでの育成環境が必要です。

🐚 ゾエアを放出できる海水環境がない飼育下では、抱卵したメスは水場などで放幼します。水場にオレンジがかった粒が大量に沈んでいる場合は、放出されたゾエアの死骸です。
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