制作の目的
オカヤドカリの飼育では真水と海水の両方を常設する必要がありますが、市販されている仕切り付きの食器は小皿サイズが中心で、ケース内に設置するには浅すぎたり、水量が確保できなかったりします。サイズ・深さ・重量・仕切り位置を自分の飼育環境に合わせて設計するため、自作することにしました。
使用するのは ヤコ オーブン陶土 です。家庭用オーブンで焼成でき、付属の手引書に従えば陶芸未経験でもオリジナルの陶器を制作できます。
👉️ヤコ 公式サイト:http://www.yako.co.jp/
用具
成形には複数の手法がありますが、厚みを均一にしやすく、短時間で成形できる「たたら作り」を採用します。
- オーブン陶土セットBasic
陶土・コート剤・ハケ・手引書が含まれるビギナー向けのセット。マグカップ1個分が目安。 - たたら板・のし棒セット
長さ30cm/厚さ5mmのたたら板とのし棒のセット。陶土の厚みを均一に伸ばすために使用。 - ハケ(2本)
1本はドベ用、もう1本はコート剤用。セット付属のものに加えてもう1本用意します。 - ガーゼ
陶土が作業台や型に張り付くのを防ぐために使用。 - スパチュラ(ヘラ)
陶土を型に合わせてカットする際に使用。パレットナイフなどでも代用可。
🐚オーブン陶土セットBasicに、たたら棒・のし棒、陶土が3パック追加された オーブン陶土セット Standard もあります。
制作手順
制作は「成形」「乾燥」「焼成」「コート剤塗布」「再焼成」の順に進みます。乾燥と焼成に時間がかかるため、作業日程を確保してから着手することを推奨します。
型とドベの準備
成形作業に入る前に、器の形状を決める「型」と、陶土同士を接着する「ドベ」を用意します。型は仕上げたい器の内側に近い形状のものを選び、陶土が張り付かないようガーゼで保護します。ドベは制作中に何度も使用するため、最初に作っておきます。

作業台にガーゼを敷き、たたら板をセットします。型にする器を用意し、陶土が張り付かないようガーゼで包んで輪ゴムで止めます。

クルミ大の陶土に水を加え、マヨネーズほどの固さにした「ドベ」を作ります。
ドベは接着剤・パテのように使用します。開封した陶土はドベの調整中に乾燥しないよう密封しておきます。
底面と側面の成形
器を底面と側面の2パーツに分けて成形し、ドベで接合して器の形に組み上げます。たたら板を使って陶土の厚みを均一に伸ばすことで、焼成時のひび割れや変形を抑えます。

底面用の陶土をたたら板の間に置き、のし棒で均一に伸ばします。

型を載せ、型より数ミリ外側をパレットナイフでカットします。

側面は陶土を継ぎ足しながら必要な長さに伸ばし、器の高さに合わせて余分をカットします。接合面にドベを塗り、表面の切れ目を指でなぞって馴染ませながら接合します。底面と側面の接合部も同様にドベで埋め、全体を成形します。
乾燥と焼成
成形した器を乾燥させたうえでオーブンで焼成し、食器用コート剤を塗布してさらに焼成することで、水を入れても問題のない器に仕上げます。乾燥が不十分なまま焼成するとひび割れの原因になるため、表面が白っぽくなるまでしっかり乾かすことがポイントです。

成形後の工程
|
工程 |
温度 |
時間 |
備考 |
|---|---|---|---|
|
1次乾燥 |
室温 |
2~5日 |
全体が白っぽくなるまで |
|
1次焼成 |
170℃ |
40~50分 |
予熱不要 |
|
コート剤塗布 |
— |
— |
食器用コート剤「Yu~」を全体に塗布 |
|
2次乾燥 |
室温 |
ベタつきがなくなるまで |
|
|
2次焼成 |
110℃ |
20分 |

乾燥中にヒビが生じた場合はドベで埋めて補修します。

焼成後に器が完全に冷めてから水を入れ、水漏れがないか確認して完成です。
作品
これまでに4点を制作しました。それぞれ前回の課題を踏まえて改良しています。
1作目(陶土セット付属/試作)
陶土セット付属の陶土を使用し、初めて制作した1点です。

仕切り付きで真水と海水を分けられる構造にしましたが、ケース内に設置すると大きすぎることが判明しました。
用途を考えましたが、結局は使用せずにお蔵入りです。
2作目(紅陶/PPテープ芯)
型をPPテープの芯に変更し、陶土は紅陶を使用しました。1作目より二回り小さく、高さも低いサイズに変更したため、1袋の陶土で2個制作できました。

サイズは適正になりましたが、軽すぎてオカヤドカリが容器を動かしてしまう問題と、高さが低く、側面と底面が垂直に接合しているため、水換え時に洗いにくい問題が残りました。

イメージと実運用にはギャップがあります。
3作目(黒木節/PPテープ芯改良版)
2作目の「高さが低い」「軽い」「洗いにくい」という3点を改善した改良版です。陶土は黒木節を使用し、底は5mm厚を2枚重ね、側面は底部から中程まで土を盛って台形状にすることで重量を確保しました。

器の内側は接合面が直角にならないよう土を足して半円形に成形し、洗いやすさを改善しました。縁はわずかに内側に向け水がこぼれにくく、仕切り部分には傾斜を設けてオカヤドカリが溺れないように配慮しています。

水量は2作目の約2倍を確保でき、重量・形状ともに実用レベルに達しました。
4作目(タッパー設置型)
3作目を継続使用するうちにコート剤が徐々に剥がれてくる問題が生じたため、水に直接触れる部分を交換可能な小型タッパーに任せ、陶器側はタッパーを設置する台座として機能させる設計に変更しました。

初回はオーブン焼成時に陶土が縮むことを考慮せず作ったため、タッパーが入らず失敗。

2回目はタッパーの蓋の寸法に合わせて型を作り、ほぼ寸法どおりに仕上がりました。

タッパーは満水にしても容器全体の重量で安定し、タッパーごと取り出して水換えが行えるため、メンテナンス性が大幅に向上しました。
🐚当初はタッパーの中にすっぽりと入ってしまうオカヤドカリがいたため、サンゴ枝で足場を作っていました。現在は成長したので足場を外しています。
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