オカヤドカリの繁殖記録

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飼育の記録

繁殖の経緯

2021年と2022年の夏、当時飼育していた3号が生きていた頃に、2年続けて水入れの海水にゾエアが放出されたことがありました。当時は繁殖を考えておらず、2023年1月に3号が死んでからは放幼がなかったため、我が家ではもう繁殖は起きないものと考えていました。

しかし、2026年7月下旬、飼育しているオカヤドカリが水入れの海水にゾエアを放出しました。容器も餌も用意のない状態からの飼育開始です。

飼育の方法を調べると、既存の情報は、どのように育てたかは書かれていても、その方法が適している根拠までは示されていないものがほとんどでした。また、アクアリウム未経験者には情報が断片的だったり、大掛かりな装置を前提としていたりと、そのまま再現するのは難しい内容でした。なにより、換水や給餌が1日に何度も行われていて、仕事を持ちながら続けられる頻度ではないことが、最大の懸念点でした。

ゾエアの飼育は、こうした疑問を一つずつ確かめる試行錯誤の連続になりました。

オカヤドカリの繁殖
オカヤドカリの繁殖について、放幼に備えた海水プールと飼育容器・海水・ブラインシュリンプの準備から、ゾエア期の給餌と換水、グラウコトエへの変態と入殻、陸上槽への移動と上陸、稚ヤドカリの給餌とケース管理まで、飼育経験に基づいて解説。容器の水深と飼育密度の目安、変態直後の個体が死骸に見える注意点、共食いへの対処についても紹介しています。

容器と曝気

水入れから回収したゾエアは、まず家にあった1.5Lのプラケースに人工海水を作って移しました。しばらくするとケースの中で動きが弱くなったため、家にあった陶器の器に分けて密度を下げ、そのあいだに飼育用の容器を買いそろえました。

既存の飼育記録では、ゾエアの容器には弱い曝気(エアレーション)をかけるのが一般的です。ゾエアが水中を漂うように水流を作ることが目的とされていますが、泡が数筋出る程度の曝気で、ゾエアを浮かべておけるほどの対流が起きるのかは疑問でした。海外の飼育記録には、ポンプで水を回して容器内に回転する流れを作る装置もありますが、家庭で手軽に用意できるものではありません。

曝気の必要性

容器は、一般的なプラケースとジップロックコンテナのほかに、試験的に製氷器を使いました。プラケースには弱い曝気をかけ、ジップロックと製氷器は曝気なしで飼育しています。曝気で酸素が補われる分、プラケースにはほかの容器より多めに収容しました。

zoea case

容器

水量

曝気

水深

収容数

減少率/1日

プラケース

1L

あり
(泡が数筋)

約10cm

400匹前後

約4~5%

ジップロックコンテナ

1L

なし

約4cm

300匹前後

約3%

製氷器

1区画
約20mL

なし

約2cm

1区画5~6匹

約1%

曝気をしていても、ゾエアは容器全体に散らばるのではなく、光の強い側に集まり、底にとどまっている個体も多く見られました。そのため、曝気の効果はゾエアを水中に漂わせることではなく、対流によって酸素を水中に行き渡らせることにあると思われます。水深のあるプラケースでは曝気が欠かせませんが、浅いジップロックや製氷器では、曝気がなくてもゾエアは問題なく泳ぎ、餌のブラインシュリンプを捕らえていました。

また、死亡が最も多かったのは曝気をかけたプラケースです。個体数が減っても死亡の割合はあまり下がらず、収容数の多さだけでは説明がつきませんでした。原因は分かりませんが、少なくとも弱い曝気をかければ多く収容できる、という前提は成り立ちませんでした。

容器の大きさ

ゾエアの飼育容器は、大きな水槽でまとめて育てる方法と、小さな容器に分けて育てる方法に分かれます。海外の飼育記録では大きな水槽でまとめて飼育している例が多く、国内では小さな容器に分散させている例が多い傾向があります。

大きな水槽のメリット

  • 水流の作りやすさ
    水を循環させる装置を設置でき、ゾエアが漂う環境を作りやすくなります。
  • 緩やかな環境の変化
    水量が多いため、給餌による水質の悪化や水温の変化がゆっくり進みます。
  • 換水の負担の軽減
    フィルターを併用すれば、換水の頻度や量を減らせる可能性があります。
  • 作業の集約
    給餌や換水の作業は、1つの水槽に対して行うだけで済みます。

大きな水槽のデメリット

  • 問題の一斉拡大
    水槽全体が1つの環境のため、水質の悪化や病気などの問題が起きると、一度に全滅する可能性があります。
  • 費用と設置場所
    水槽・ポンプ・フィルターなどを一から揃える費用と、設置する場所が必要です。
  • 個体の状態把握の難しさ
    ゾエアは体長2~3mmほどと小さいため、大きな水槽では個体ごとの様子や死骸を把握しにくくなります。
  • 1回あたりの換水量
    換水のたびに、多くの人工海水を用意する必要があります。

小さな容器のメリット

  • 始めやすさ
    ジップロックコンテナや製氷器など、身近な容器で始められます。
  • 問題の局所化
    容器ごとに環境が分かれているため、1つの容器で問題が起きても、ほかの容器には影響しません。
  • 容器ごとの条件変更
    新しい餌を試すときなど、一部の容器だけで様子を見ることができます。
  • 状態把握のしやすさ
    個体数が少ないため、様子の変化や死骸に気づきやすくなります。製氷器では、全数を目で数えることができました。
  • 浅い容器での無曝気飼育
    水深の浅いジップロックや製氷器では、曝気なしで飼育できました。

小さな容器のデメリット

  • 容器の数に比例する手間
    給餌や換水を容器ごとに行う必要があり、容器が増えるほど作業も増えます。
  • 環境悪化の速さ
    水量が少ないため、給餌による水質の悪化が急速に進みます。同じ問題でも、大きな水槽より影響を受けやすくなります。
  • 水温の変わりやすさ
    水量が少ないほど、室温の変化が水温に伝わりやすくなります。

段階別の容器

繁殖は、ゾエア期・グラウコトエ期・稚ヤドカリ期に分けられます。ゾエアは海水の中で脱皮して成長しますが、グラウコトエには入殻(貝を背負うこと)や上陸があり、稚ヤドカリになると成体と同じ陸上で生活します。そのため、飼育ケースの環境も段階的に変更が必要になります。

放幼されたゾエアを育てるゾエア槽は、海水だけでよく、海水温度や濃度は基準値があるので、違ってくるのはケースの大小や曝気の有無くらいです。
問題はグラウコトエ槽です。グラウコトエは入殻するまで、ゾエアと同じ環境で育てることができます。ただし、グラウコトエは攻撃的で、ゾエアを捕食します。また、入殻した後は上陸するため、ケースには陸地が必要になります。

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当初は、グラウコトエ槽に陸地を設けた上陸槽として、45cmほどの収納ボックスを使用していました。海水部分にはサンゴ砂を1~2mm敷き、陸上部分は琉球石灰岩やサンゴ石などを積んだ上にサンゴ砂を敷いています。海水から砂浜は小粒のサンゴ石で傾斜を作っています。無曝気が前提だったため、水深は4cmにしています。海水部分にジップロックコンテナなどのケースを使用することも検討しましたが、ケースを入れると海水部分が少なくなるため、この形になりました。

この上陸槽に、変態したグラウコトエを順次移し、最終的にグラウコトエ約30匹とゾエア約100匹が入った状態になりました。しかし、ケースが大きく隠れる場所も多いうえ、底にサンゴ砂を敷いているため、移したグラウコトエを目で確認するのが難しいことが分かりました。

さらに、最後に移した翌朝には、ケース内のグラウコトエとゾエアが全滅していました。原因ははっきりしていませんが、考えられるのは以下です。

  • 新たに購入したサンゴ石や貝殻を煮沸消毒せずに使用した
  • ケース自体の洗浄が足りていなかった
  • 餌の過剰投与
  • 酸欠

この中で酸欠は、水深が同じ4cmのジップロックコンテナでは無曝気でも問題が起きていなかったため、最も可能性の低い候補です。

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上陸槽の全滅によって構成を考え直し、グラウコトエはゾエア槽と同じジップロックコンテナを使用し、小さなサンゴ石や枝サンゴと入殻用の貝殻のみを投入することにしました。このスタイルであれば、グラウコトエを確認しやすく、給餌や換水もしやすいというメリットがあります。ただし、陸地がないため、入殻した個体は別容器に移す必要があります。

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新たな上陸槽として、ジップロックコンテナにサンゴ砂を敷き、海水の上に出るよう大きめのサンゴ石や枝サンゴを設置しました。入殻したグラウコトエを移動し、サンゴ石に登って水面上に出れば上陸と判断します。

しかし、設置から数日間の様子を観察していると、水面上に出ても、しばらくすると再び水中に戻るという行動を繰り返していました。

そこで、上陸槽の代わりに、陸上槽の中にシャコ貝の海水プールを設置し、入殻したグラウコトエをそこへ移すことにしました。

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海水プールに移動した個体は、数時間で海水から出て上陸したため、上陸槽そのものが不要だという結論に至りました。

給餌

ゾエア期の餌はブラインシュリンプのみで、量の調整以外に大きな問題は起きませんでした。問題が起きたのは、グラウコトエ期に与えた餌です。

既存情報では、グラウコトエはさまざまな餌を食べるとされています。実際にグラウコトエは、ゾエアのような生きた個体を捕食するほか、冷凍のシュリンプやペレットなどを食べます。

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グラウコトエは水面付近に漂っていることが多く、水に浮かぶ餌を与えたといった既存情報もあります。しかし、ジップロックコンテナのように、水深の浅いケースを使用している場合は、一泳ぎで底面に到達するため、大きな問題になりません。

固形餌(ペレット)

グラウコトエに与えるペレットは、淡水用のエビやザリガニの餌を使用します。海水に入れた固形餌がどれくらいで沈み、崩れるのかが分からなかったため、グラウコトエに与える前に、4製品を購入して海水(比重1.021)に入れて比較してみました。

区分

粒の大きさ

沈むまでの時間

容器を揺らした時

テトラ ビーシュリンプ

1.5mm以下

1時間で一部

原形のまま

キョーリン ザリガニ・ヤドカリ・カニのエサ

約4mm

約5分

原形のまま

キョーリン ザリガニのエサ にごり・ニオイ対策用

約4mm

1時間で半数以上

原形のまま

スイミー シュリンプ

約7mm

投入直後

崩れた

4製品とも「沈下性」と表示されていますが、海水ですぐに沈んだのはスイミー シュリンプだけでした。12時間経っても4製品とも形は崩れず、20時間経っても水は濁りませんでしたが、独特の臭いが出てきました。

実際にグラウコトエに与えると、キョーリンは投入から約9時間、テトラ ビーシュリンプは約20分経った時点で、どちらも原形をとどめたまま水底で食べていました。

全滅と大量死

グラウコトエ期には、餌を与えた後に全滅や大量死が4回発生しています。因果関係は不明ですが、状況的に餌が関係している可能性が高いと考えられます。

日付

容器

与えた餌

結果

8月16日

上陸槽

スイミー シュリンプ

翌朝に全滅

8月17日

グラウコトエ槽3ケース

冷凍ホワイトシュリンプ

量の多い2ケースが4時間後に全滅

8月20日

グラウコトエ槽3ケース

スイミー シュリンプ
冷凍アダルトブライン

翌朝に3ケースとも全滅

9月11日

グラウコトエ槽

冷凍ホワイトシュリンプ(少量)

5匹中3匹が死亡

ホワイトシュリンプ自体は、与えればよく食べますが、1ブロック投入したケースが全滅しています。ただし、少量でも死亡する個体が出ており、量だけでは説明がつきません。すべて冷凍アダルトブラインに切り替え、少量ずつ与えるようにしてからは大量死が発生していません。

スイミー シュリンプは粒が大きく、水質への影響が懸念されます。スイミー シュリンプを与えたケースは、すべて全滅しているため、ペレットはテトラ ビーシュリンプとキョーリン ザリガニのエサ にごり・ニオイ対策用にしました。

稚ヤドカリ

最初の個体が上陸したのは9月6日で、9月18日の昼には、陸上槽の海水プールが空になったことで、すべての個体の上陸を確認しました。

上陸した後は、稚ヤドカリに変態したかどうかの判断が難しくなります。9月22日と23日に撮影した写真では、眼や脚は見えるものの、ハサミの形までは写っておらず、グラウコトエか稚ヤドカリかを見分けることはできませんでした。9月25日に撮影した写真と動画で、ようやく大きなハサミと腹部を確認でき、孵化から約2ヶ月で稚ヤドカリになっていることが分かりました。7月下旬の放幼から、約2ヶ月後のことです。写真に写っていた砂粒(約1mm)と比べると、全長は約8mmと推定されます。

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陸上槽で一度に姿を確認できたのは、それまで4匹が最多でした。9月下旬には2~3匹しか見えない日が続いたため、10月1日の時点では、見えない個体は稚ヤドカリへの変態の途中で死んだのだと考えていました。しかし、10月7日に5匹の稚ヤドカリを同時に確認し、見えていなかった個体も生きていたことが分かりました。

陸陸上槽に移したのは8匹で、残りの3匹は確認できていません。稚ヤドカリへの変態時に死亡した可能性が高いと考えています。2026年10月の時点で、稚ヤドカリになった5匹を飼育中です。

更新履歴

  • 2026/10/10:初版公開

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